はかば

しこうのくよう

君がいた春

モノクロの世界に花びらが舞う 花びらの後には君が待っていた 僕の世界は他人(ひと)の音 僕の景色はいつまでも霞む 誘(いざな)う先に暖かな光 踏み出す勇気はありはしない モノクロの世界に星がまたたく 星の向こうには君が輝いていた 僕も忘れた僕の音 僕の…

タレンタイム

観終わったあと不安感に苛まれる作品がある。私は何を感じれば良かったのだろうか、どういう作品だと言えば良いのだろうか。私は感度が低いのかもしれないし私は言語能力が低いのかもしれない。私は観客たり得てるのだろうか。 タレンタイムを観たあと、よく…

ホロコースト:分断と蔑み、そして無自覚の先に待つもの

アウシュビッツ強制収容所に行ってきた。予習として『ホロコースト』(芝健介, 2008)という本を読んでいたので新たな大きな驚きはなく沈痛した気分にもならなかった。建物や建物跡が残るだけ、という特性もあるだろう。もちろん遺留品やいくらかの状況写真…

昼下がり

誰もいなくなったこの部屋に、換気扇の音だけが静かに響く。 先ほどまで隣に座っていた事務員の木村さんも遅い昼食をとりに食堂へいき、用務員さんもいつものように見回りにいった。普段なら何かしらの用事で学生が出入りしているはずなのに、結界でも張られ…

選ぶ

物生選択をする高校生を前にして、私は何を言えば良いのか分からなかった。特に行きたい方向があるわけではない、だから選択肢の多い物理を選ぼうと思う。それに対していいやんと言った。 そもそも特に学部を決めていないなら物理の方が安牌であるといったの…

絶妙だった旅

気の置けない後輩たちと三人で日帰り旅行に行った。 青春18切符が3つ余るからどこか行こうよと声が上がったことにより、ゆるりと日付を決めてゆるりとメンバー追加の声掛けをしてゆるりと行先決めて行ってきた。 旅のあいだもそんな感じで何があったわけでは…

愛してなんかいないのに

たまにはピザが食べたくなる。でも、好きな食べ物でピザといったことはない。 私がピザを食べるときは半額セールをやっているときかピザを取りに行ってくれる人間がいるときぐらいだ。学校付近に安いピザ屋があり一時期毎日のように食べていた時も、先輩が研…

えも言われぬエモさ

先日、寮の先輩たちと久しぶりに会った。あんなに長いこと学生生活をしていたのに働き始めてもう数年が経つことがなんだか不思議な気持ちになった。あの頃同じ時間と空間を共有していた先輩たちが、全く違う話題を口にし知りえない世界のことで悩んだり苦労…

君の名前で僕を呼んで

(だいぶ前に見て書きかけたまま放置していた感想文) 映画を見終わった後、私は何を感じて何を持ち帰れば良いのか分からなかった。ただ、あの手に、あの間に、あの顔に、覚えはあった。そのじれったさに、その行方も知らぬ気持に対して届く範囲に埋め合わせ…

齢25、私は人生レベルが2になった

携帯電話を変える機に、過去の写真を見返した。あまりにも見てられない写真がだらけでびっくりした。何がいけないんだろう、たぶん髪型。めちゃくちゃうっとうしい。 冷静に過去を振り返ってみると、まず鏡を見てこなかった。小学生のときに鏡を見た覚えはな…

とんび - 重松清

この話には一貫して”普通”の家族の像はほとんど描かれない。 父がいて、母がいて、子供がいる家庭。 親を知らずに育ったヤスさんと同じく妻の美佐子さん。 二人の息子アキラが幼いころに美佐子さんは亡くなってしまう。 周囲をみても、娘に母と認識される前…

八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。 - 天沢夏月

「俺はどうしたらいい、透子。」 四年前の夏のあの日から、ただ時が過ぎてゆく毎日。 彼女の死を清算できず、逃げるように東京に出たまま故郷に足を踏み入れるきっかけを失っていた。 線香をあげてやれよ。との友人からのメールで2年振りに帰ってきた町。 廃…

こんなにも優しい、世界の終わりかた - 市川拓司

「優しくないね」 「うん、優しくない」 この世界で穏やかに生きるのは難しい。 心の趣くままに生きるのは難しい。 多くを望まないことを許してくれない。 ぶきっちょには厳しい世界だ。 世間からはみ出た、独自の世界をもつ男の子たち クラスの男子の視線の…